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EternalCurse

Story-84.虚ろげなる抱擁*閲覧注意 この回には未成年者の閲覧にふさわしくない表現がされています。
別に女を知らないというわけではない。
数多の美女達が、ブランシュール公爵家の次期総領である彼に憧れ、こぞって身を投げ出そうとしてきたこともある。ただ、そういった者に限って、恋慕という感情だけでなく、その裏で家の繁栄のためと両親の悲願を背負う場合も多く、政治的な駆け引きを伴っていることがある。
シェイドにとっては、そのような女は相手にするのも煩わしかった。
少なくとも、今は違うと、はっきり言える。温かく優しいエステリアの胎内に包まれ、往復しては、白蜜を吹き付ける、その甘いひと時を、シェイドはただじっくりと、楽しんでいた。
妖魔の口付けは神子にとっては媚薬であるように、神子の胎内より溢れ出る蜜は、妖魔自身を萎えさせることなく、噴いては猛らせていた。シェイドはふと眼下のエステリアに視線を移した。
荒い息と共に、弾む胸、硬く尖った胸の飾りと、上気した頬の色から、彼女が今、法悦の最中にいることは、見て取れた。その愛らしく膨れた薄桃色の頂に、シェイドは唇をつける。こうすればさらなる悦びを神子に与えることなど充分に承知している。勿論、エステリアの聖域にもそれを施している。
シェイドは繋がった下腹部に……その分身である楔に意識を預けた。妖魔の楔は、人間のそれとは異なっている。夢魔、淫魔が人を虜とするように、それは神子を悦ばせるためにあると言ってもいい。蛇腹のような段差を持った楔には所々、真珠粒のような突起がついており、発達した先端のすぐ下には爪ほどの、付け根には親指ほどの刺激突起を伴った肉塊が隆起していた。小さな肉塊はエステリアのさらなる秘所を、また付け根から生えた肉塊は動くたびにその花芯を圧迫し、摩擦する。悦楽へと堕ちぬという方が無理な話だ。
とはいえ、本来ならば、受け継がれてきた神子の魂を呼び覚ますはずの――肝心なメルザヴィアでの儀式の時でさえ、エステリアは意識を失ったままであった。無論、母親ソフィアとヴァロア皇帝アイザックのこともあってか、そんな彼女を無理矢理、妻にすることを強いられたシェイドにも、なにやら複雑なものがあったが、気を失っていても、夢半ばに時折零れるエステリアの甘い吐息に、刺激され、彼女の細い腰に夢中で、自身を刻み付け、力を植え付けるに至った。
その後も神子らしき兆候を見せぬエステリアに対し、再び試みることがあったが、それはほとんど義務感や打算によって行ったものだった。今となってはエステリアとシェイドとの間に、わだかまり、というよりは隠し事が無くなった分、まだ救いがあるのかもしれない。

しかし、つい近頃までエステリアは清らかな巫女として育ってきたのだ。真相がわかったとはいえ、妖魔に応じて奔放に情けを交わせるはずもない。ならば、なぜ自分から身体を開くような素振りを見せたのだろうか? 先程、眠っている間に、自分に触れた際、エステリアが『何か』を見たのは間違いない。
同情――そんな二文字がシェイドの頭の中をちらつく。哀れなこの身を思ってか、仕方なくエステリアが身体を与えたように思えて他ならない。法悦の中にあっても、さほど声をあげず、ただ必死に何かを堪えているようなエステリアの様子が、それを顕著に物語っているようにも思えた。それが、シェイドの心に不安を掻き立て、波紋を立てる。
シェイドが不安を募らせる傍らで、エステリアは、自らの意思に反して、至宝の間に赴く前夜とは比べ物にならぬほどに押し寄せる、愛欲の波に、頭の芯が朦朧としながらも、楔が与え続ける身震いするほどの快楽の海に溺れていた。
「あっ、あっ、あぁ……」
身体の中心を貫く甘い熱に徐々に支配され、確実にこれまでとは違う新しい感覚が織り成す律動に、エステリアは仰け反った。
長い睫毛を伏せ、眉をひそめたまま、半開きになった唇から零れる白い歯――そして吐息、エステリアの表情は、艶かしく、美しい。神聖と淫靡――その境界にいるエステリアの表情に息を呑むと、シェイドはそれを堪能するようにして、動きを早めた。
「は、あっ……あっ……あ」
エステリアは羞恥に瞳を潤ませ、小さく喘いだ。打ち合わされ前後する波が少し激しくなる。
「エステリア……」
エステリアの耳元でシェイドが囁いた。掠れたようなその声に、エステリアが瞳を見開く。どこか不安で、何かにすがるような表情でシェイドはエステリアに頬擦りした。
妖魔は……最後の英雄の魂は神子にのみ救いを求めている――かつて愛したミレーユのことさえ、もはや忘却の彼方に置かれ、ただ神子にのみ、愛情を注ぐ。
あまりにも悲しい定めゆえに、エステリアは宥めるように、そっとシェイドの首に両手を回した。
ようやく安心したようにシェイドが瞼を閉じる。
「んっ……」
まるで自分の意思でもあるかのように、胎内を掻き乱すシェイドの楔に、エステリアは微かに声を漏らした。
「エステリア……」
瞼を伏せたまま、シェイドは行為に耽っている。彼にしてみれば、全ての動作に、行為にエステリアが反応を示し、応え、悦びを見出しているのであれば、それで良いのだろう。
「あっ、あっ……あ」
これまでエステリアが呪詛だと思っていた互いの印が重なり、擦れる度に、熱を持つ。やはり、これが逃れられぬ運命であると、そして自分にとって彼は運命の人であるのだと、エステリアは実感し、目尻に涙を浮かべた。その涙をシェイドの舌先がすくい取る。
高みに向かって、力強く前後する楔に、エステリアは耐えられず、喘ぎ声をあげる。
「んっ……あっ、あっ……あ、あぁんっ……シェイドっ……!」
鈍い衝撃が刺激を与える度にエステリアは、嬌声をあげる。密着した身体がさらに深く繋がろうとしていた。
「あ、はっ、ぁん、ああっ、ああっ、あん、ああっ」
「エス……テリア」
共に分かち合うべき時が、一致した刹那――シェイドは自身の力を解き放った。
シェイドは、エステリアの最奥まで届くよう、何度も、何度も腰を押し付けると、強く抱きしめ、逃さぬように、零れぬように、有り余る力を送る。エステリアもまた自身をシェイドの楔に密着させ、無意識のうちに擦り付けていた。
胎内の最奥に注ぎ込まれる迸りは、全く子種としての役割を果たさない。ただ、神子の力となるだけだ。子を宿せぬ代わりに植えつけられた、闇のみを司る妖魔の至宝――人と異なり、長々と迸る蜜によって満たされる胎内。エステリアは妖魔の力がそこに吸収され、宿るのを確認するかのうように、両手を下腹部にあてがう。至宝が力を経て熱を持ち蠢動するのを身体を以って感じていた。
エステリアはこの瞬間が、まるで平凡で貪欲な幼虫が蛹を経て、美しい蝶へと羽化する際に放つ煌きのようにも思えた。
「あっ……あっ、あっ……ああ……」
これまでとは違い、火花が散るような、それでいて内側から確実に満たされていくような感覚に、エステリアの頭の中は真っ白になった。
シェイドの迸りに応じるように、エステリアの内側からもまた、美しい飛沫を上げる。この上ない至福に、エステリアの身体は素直な反応を示した。力が駆け巡る間、激しく痙攣し、薄桃色の頂が、花芯が膨らみ、堅く根を張る。その刹那、身体を離れた楔が白い蜜を飛び散らせ、エステリアの身体に降り注がれた。洗礼のように身体中に浴びせられた蜜を、シェイドは満遍なく、エステリアの身体にすり込んだ。揉み解される胸に、太腿を滑り落ちる手の感触、花びらに触れる暖かい唇――繰り返される愛撫は、いや、身体の中に染み渡った蜜は、催淫のための媚薬か……。
エステリアの身体は、魂は再び妖魔の身体を求めようとしていた。
「お前……少し身体の線が変わったんじゃないか?」
不意に頭を上げたシェイドが訊いた。
「やつれた……とか、痩せた……とか、貴方の養母様に言われたわ」
掠れた声で、エステリアが答える。
「いや……そうじゃない……その……」
シェイドは何故か怪訝そうに眉を潜めると、ぽつりと一言漏らす。
「お前……前より、胸が大きくなってないか?」
「何、馬鹿なことを言ってるのよ……そんなこと、答えようがないじゃない……」
エステリアは口ごもった。確かに胸は張っている。サクヤによれば、神子の役目を終えぬ限り、月のものは訪れないというのだから、それが関係しているのだろうか? とも思った。
しかし、確かにエステリアの身体は、シェイドに指摘された通り、儀式を終える前と比べ、肌は艶やかで、体系も、女性らしい曲線を描いている。
交わりを重ねる度に、シェイドを包み込むその秘所は、甘く、きつく締め付け、至上の悦楽へと導いているのだ。ふくよかになったエステリアの胸を、シェイドが愛撫する。
「んっ……」
揉み解される心地よさに、エステリアが甘い吐息を漏らす。シェイドはそんなエステリアの頂を、指で弾き、刺激を与えた。エステリアが酔いしれていると、未だ堅く尖った胸の飾りから、わずかながらの乳白色の液体が零れた。
「え?」
子を産んだわけでもないのに、乳が出るはずもない。エステリアが戸惑っていると、その甘い蜜をシェイドは何事もなかったかのように舌で優しく絡め取った。
不意にサクヤの言葉がエステリアの脳裏に蘇る。
これからは心身共に様々な変化が訪れることになる……と。何かそれが関係しているのだろうか?
――エステリアがふと思いつめていると、シェイドは再び天を向き、屹立した楔をエステリアの中に打ち込んだ。
「あっ」
甘い衝撃を待ちかねていたような反応を示し、エステリアは熱い吐息を漏らすと同時に羞恥に頬を赤らめた。
「俺達は契約上とはいえ、夫婦なのに、どうしてそこまで過剰に恥ずかしがるんだ?」
「私には驚く時間すら用意されてないっていうの?」
夫婦としては当然の営みだと言い切られているようで、半ば呆れていたエステリアの固くなった両胸をシェイドは揉み解す。再び乳房から蜜が零れ、新たに開発された快感にエステリアが身をよじる。「ああっ、あっ、っ……」
エステリアは両手を下腹部に添え、身体の中心に含んだ熱と、蠢動を続ける至宝を愛しげに撫でていた。
「少し前……お前が言っていたように、このまま一つに溶けて一緒に消えてしまえたら、どんなにいいだろう」
唇を啄ばむシェイドから零れたその言葉は、魂の底に眠る、神子と英雄の遺志なのだろうか?
「やっと見つけた。会えて良かった――」
どこか虚ろげなシェイドの言葉を訝しげに感じたエステリアであったが、
「やっぱり、貴方少し変……んっ」
最後まで言わせて貰えずに胸の飾りを強く吸われ、エステリアの胎内がそれに伴って収縮した。
きつい締め付けに、シェイドの蜜が絞り取られる。
じわりとした生暖かい感覚が、身体中に広がる中、エステリアは、赤子のように胸に吸い付く妖魔の頭を抱きしめていた。本来、神子が第三者……我が子に捧ぐことのない母性は、全て妖魔にのみ注がれる事を理解できたように思えた。悦びに咽ぶ神子の魂を抱く傍ら、エステリア自身の魂は、どうしてか、シェイドとミレーユの思い出ばかりが気がかりでならなかった。二つの魂の狭間で何かの矛盾と罪悪感を覚えながらも、エステリアはそっと瞼を閉じ、送り込まれてくる力を受け取っていた。
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