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EternalCurse

Story-54.聖婚 *閲覧注意 この回には未成年者の閲覧にふさわしくない表現がされています。
神子以外の人間が至宝の間を訪れれば、確実に死ぬ――その言葉を反芻しながら、エステリアは歩みを進めていた。外は既に陽が落ちている。現にエステリアは夕食も湯浴みも済ませていた。物思いに耽るときの時の流れは、なんと早いものだろう――つくづくそう思う。
神子の力なくして、テオドールの快復は望めない。リリスがシエルを開放する条件として出してきたのは、至宝を手に入れること。しかしそれが限りなく不可能に近いということは、エステリア本人が重々承知していた。それでも、明日になれば、至宝の間へと赴くしかない。
確実に失敗に終ると――自分が死ぬことになるとわかっていても、だ。
そもそも自分が聖女としての資格――純潔を失ってしまったのは、自身の不注意にある。そのお陰でこれまで随分とシエルには迷惑をかけてきた。エステリアは、たとえ、至宝を手にして命を落としたとしても、シエルへの恩義に報いたいという気持ちで一杯だった。
しかし、自分が死んだ後、代わりに至宝を献上して、シエルの開放を国王に請う人間が必要となる。同時に、自分が神子の資格を失っていたことも明るみになるのだから、テオドールの怒りは計り知れない。それを緩和できるのは、国王の甥であるシェイドのみだ。さすがのテオドールも、自分の甥に死刑を言い渡すことなどできるはずがない。まず、メルザヴィア王国が許さないだろう。ずるい考えではあるが、こればかりはどうしようもなく、シェイドを頼るしかない。エステリアは『万が一』の事態に備えて、事情を話すべく、シェイドの部屋を訪れた。
軽くドアをノックすると、内側からぶっきらぼうな返事が聞こえた。恐る恐るドアを開くと、シェイドは自身の寝台に座り込み、なにやら分厚い本に目を通していた。傍の台には魔剣が立てかけられている。
「どうした? 何か用か?」
「あの……」
「そんなところに突っ立ってないで、入ってこいよ。椅子ならあるぞ?」
促されるままに、エステリアはシェイドが用意した椅子に着席した。と、同時にシェイドは手にしていた本を閉じ、台の上に置く。
「何を読んでいたの?」
「色々と調べものがあってな。少し歴史書に目を通していた」
「歴史……書?」
エステリアは首を傾げた。
「グランディアの建国王から獅子王、そして現在の兄弟三国に至るまでの歴史を綴った本さ。歴史――とは言っても、所詮は勝った側の言い分として、都合のいい事しか書いてないんだけどな」
「負けた側にだって歴史書はあるんでしょう?」
「負けた側が歴史書で綴ることなんて、たかがしれているぞ? まずは敵国に対する憎悪と怨嗟を毒々しく吐いた後に、自国への愛国心や憂い、憐憫を強調した文章が延々と続くだけだ。勿論、敗因なんかは棚に挙げてある。要は、壮大な文句で成り立つ呪いの書だな」
「で、勝った側の歴史書から、何を調べようとしていたの?」
シェイドは一呼吸置くと、エステリアの顔色を伺うように言った。
「テオドールがマナを襲撃したときの一件を調べていたんだ。案の定、文献には、異教徒の弾圧程度しか書かれていなかったが……」
「そう……」
エステリアの返事は小さく、心ここに在らず――という調子であった。いや、なんとかシェイドに話を切り出せるよう、機会を見計らっていると言った方が正しい。
「お前にとって嫌な話をしてしまったな」
「ううん。平気よ。でも、どうして今更そんなことを知りたいと思ったの?」
「あのテオドールが、現在、病にて離宮で療養中――お前、この話をまともに信じるか?」
「え?」
「俺には、テオドールは別の目的があって、身を隠しているとしか思えない――テオドールの真意を知るための鍵は、十六年前のマナの襲撃にあるはずだ」
一体、どうしてそう結論付けることができるのだろう?――眉間に深い皺を刻むエステリアと視線を交わすことなく、シェイドは続ける。
「とりあえず、今確実にわかっていることは、テオドールが神子という存在を、いや……神子の力を欲しがっているということだ。そして運命の双子も手に入れようとしている――と思ったが、エドガーから聞いた話によると、少し違うような気がしてな。お前、『聖娼』って知っているか?」
「聖、娼?」
妙な響きだとエステリアは思いながら、頭を振った。
「聖娼、または神聖娼婦とも言う。聖娼は――神殿に使える巫女だそうだ。彼女達は、神の器、力の媒介としてその身体を使う」
「使う……って?」
鈍いエステリアにシェイドが深い溜息をつく。
「そのままの意味だ。聖娼達は神に見立てられていて、交わることによって、相手にその恩恵を授ける――という。そういう儀式を『聖婚』というらしい」
エステリアは顔を赤らめると、視線を逸らした。
「エドガーもさすがにお前と一緒にいるときには、話すことはしなかったが、聞くところによると、かつてテオドールは、各地から聖娼の役目を担う女達を集めて自分の愛妾にした。けれどもテオドールに満足のいく神の力とやらを分け与える者など存在しなかった。そもそも、聖娼に選ばれた女達というのは、特別な力を持っていたわけじゃない。大抵がそれといった霊力もなく、身寄りもない、もしくはわけありの娘達ばかりだった。生きていくための手段の一つとして、その道を選ばざるを得なかったという方が正しい。それでもテオドールは、『聖婚』の伝承を信じた。一体、誰がそんなことをテオドールに吹き込んだのかは知らないが。ただの女を聖娼にしたのでは効果がない。ならば強い霊力を持つ者を使えばいい。そこで次に目をつけたのが――当時マナの集落で大巫女を務めていたマーレだそうだ」
マーレ――実の母親の名を耳にした途端、エステリアの唇が固く結ばれる。
「テオドールは、運命の双子の片割れを手に入れ、聖娼にすれば自分の望みが、力が手に入るとでも思ったんだろう。けれども、奪い取ったマーレはお前を産んだばかりで、現役の頃に比べれば霊力が落ちていたらしい。王妃で結果を得られなかったなら、頼みの綱はセレスティアのみになるんだが、自分が手に入れるより前に、あの馬鹿(ベアール)が悲劇を起こしてしまった。そのことに激怒したテオドールはグランディアから至宝の一部を取り上げ、預かる権利を奪った。そして、今度は神子となったお前を手に入れようとしている。あながち、テオドールがお前を嫁にしようとしている予想は、外れてはいなかった――ってわけだ」
「陛下も……私を?」
シェイド、妖魔オルフェレスに続いて、テオドールまでもが神子としてのエステリアを欲している。さらにテオドールは神子を聖娼として扱い、聖婚を執り行うことによっての恩恵を授かろうとしているという。一体、どうなっているのだろう、周囲はまるで何かに取り付かれたように神子を手中にしょうとする。その価値とは……『神子』とはそもそも何なのだろう?――エステリアは、軽い頭痛のようなものを覚えていた。
「それで……シエルを人質に取ってまで、貴方達から権力を奪ってまで、私を得ようとしているのね。病と嘯いて、どこかに身を隠したまま……」
エステリアが失意のままに俯いた。
「ねぇ、明日の事で……話があるの。シエルを助ける方法なんだけど……」
「俺は、お前さえ無事でいてくれればそれでいい」
エステリアの話を遮るように、シェイドが言い切った。その眼差しは冷たく、メルザヴィアでシエルと別れたとき、そのものであった。
「どうしたのよ、シェイド? 貴方、何か変よ……こうしている間にも、シエルがどんな目に遭わされているか、わからないのよ?」
「あいつなら、心配ない。リリスにしてもあいつには迂闊に手は出せないはずだ。それに、正直、俺はお前以外の人間が死のうが生きようが知った事じゃない。勿論、シエルも例外ではない」
「そんな……なんてこと言うのよ!」
エステリアは思わず身を乗り出した。しかし、シェイドは動じることはない。
「お前がもし、テオドールが憎いというのなら、すぐにでも討ち取ってその首を差し出そう。お前が母親を奪ったこの国の連中が憎いというのなら、全てを滅ぼそう。俺は、お前のためにならなんだってできる、が、その他の人間に貢献するつもりは一切ない」
「シェイド、いい加減にして」
一体、シェイドはどうしてしまったのだろうか、セイランに引き続き、メルザヴィアでも魔剣に支配されたことから、その毒に蝕まれて、正気を失っているのだろうか。それともリリスの術に操られているのでは――不安げにこちらを見つめるエステリアを、シェイドは一蹴するように訊き返す。
「何故だ? 英雄王ヴァルハルトにしても、たった一人の女――俺の母親のために、ヴァロアを滅ぼしたんだぞ? それでもヴァルハルトが英雄と讃えられたのは、たまたま相手が世界の敵と称されたヴァロア皇帝だったから、それが許されただけで、行いそのものは大量虐殺も同然だ」
「だからといって、どうして貴方が同じことをやらなくてはならないのよ」
「――お前を守る為だ。俺にとって、お前以外の人間なんて必要ない」
「守る? やめてよ、私にはもう……貴方に守ってもらえるような価値すらないのよ!」
エステリアは我慢ならずに立ち上がると、まるで血を吐くように叫んだ。
「私が無事に至宝を取れる可能性は……ほとんどないと言っていいの」
ここまで言えば、自分が決して聖女などではないことが、勘のいいシェイドならばわかるはずだ。
「もし、天罰を受けて死ぬことになっても、至宝だけは必ず握って離さないつもりよ。だから私に万が一のことがあったら、それを持って、テオドール陛下の元へ向かって。陛下は自分の甥である貴方に処罰を下すことは、きっと……できないと思うから。そして貴方の口利きで、ガルシアさんや、シエルさんを救って下さい」
エステリアの口調は、まるで初めて出会ったときと同じように、他人行儀で硬い。
「サクヤはどうするんだ?」
「あの人は、セイランの賢者です。私に洗礼を与えてくれることが目的でここまで来てくれたのよ。私が洗礼を受けるだけの価値がない人間である事に、もう気付いているわ。これ以上危険なことに巻き込まれる前に、セイランに戻ってもらった方がいい」
「果たして納得してくれるかどうかが、問題だぞ? あの賢者は、売られた喧嘩は絶対に買う性格だからな」
「ごめんなさい……とても自分勝手な注文ばかり言ってることも、貴方を失望させていることも充分承知よ。でも、私が神子でなくなった以上、それしか皆を救える方法はないの」
「なにもかも投げ出して、逃げてしまおうとは思わないのか?」
「ええ」
この状況から逃げ出したところで、エステリアを待ち受けているのは、未だ定かでない子の存在に怯えながら、シエルを見殺しにした罪の意識に苛まされる日々だ。勿論、エステリアにそのようなことができるはずもない。至宝の間で死ぬ覚悟はできている。もしも、神に許されるのならば、至宝を手にして生還し、シエルを救いたい、もう一度、あの日差しのように明るい笑顔をこちらに向けて欲しいと、願う。
「話は、それだけよ……おやすみなさい。それから……ごめんなさい」
エステリアは寂しげに言うと、踵を返した。
「お前がどう思っていようと、俺にとっての神子は、お前ただ一人なんだ」
背中越しにかけられたシェイドの声に、エステリアが一瞬であったが、反応を示した。
惑わされてはいけない、もう自分は神子ではないのだから――エステリアは自分自身に言い聞かせると、そのまま歩みを進める。その手首をシェイドが掴み、引き止める。
「お前だけが、俺に生きる望みを与えてくれる」
シェイドは背後から腕を回し、エステリアを抱きすくめた。
「放して、シェイド。私は貴方に、何一つ与えてあげることはできないの……」
「明日、死ぬなんて平気で口にするお前を、このまま帰すと思うか?」
言いながら、エステリアの首筋に唇を寄せる。いつになく熱っぽいその動作で、これからシェイドが何を求めようとしているのか、嫌でも理解できる。
「本当に……駄目よ……」
理由はどうあれ、一度は妖魔と交わった身だ。信じたくはないが、妊娠の兆候のようなものすら感じるこの時に、シェイドを受け入れるわけにはいかない。
固く心を閉ざそうとしたとき――

どうしたの? 早くその手を取りなさい。
エステリアの内なる部分で、何者かが囁きかける。

もう充分でしょう? これ以上、苦しむ必要なんてないのよ……。
潮騒のように心でざわめくその言葉は、まるで悪魔の誘惑にも等しい。

貴方はもっと、幸せを手にしていいのよ……。
しきりに語りかける見えない『何者か』に導かれるようして、いや、内側から支配され、エステリアは硬くなった身体を幾分か、弛緩させた。
それを待ちかねていたように、シェイドの手が、エステリアの衣の間に滑り込み、女性の特徴である柔らかな膨らみを辿り、弄る。細いうなじを辿る唇、耳にかかる吐息が、身体中を熱くする。局部を包むように覆ったシェイドの手の温もりが伝わってくる。シェイドの長い指が、エステリアの花びらをゆっくりとなぞり、愛でるように芯を撫で、最も熱を持った更なる秘所に、侵入する。
「んっ……」
エステリアは思わずぴたりと太腿を密着させ、シェイドを拒もうとした。しかしシェイドの指は、構わずエステリアの中に隠された美しい花を押し広げると、強弱をつけた小さな波を立てる。
「朝まで、ここにいろ」
「っ、シェイド……」
エステリアが紅潮し、身じろぎしながら抵抗するも、与えられた心地よい波によって次第に息が上がってくる。エステリアの中から抜き取られたシェイドの指は、香しい蜜で濡れていた。その刺激によって、身体の芯が疼き始める。これが最後だと本能が訴えている。
もつれるように寝台に倒されたエステリアを待っていたのは、熱い口付けと抱擁だった。
抗う間に帯を解かれ、瞬く間にエステリアの白い裸体が露になる。シェイドはただじっとエステリアの裸身を見下ろしていた。その視線は美しい肢体には似つかわしくない、下腹部の呪詛を捉らえている。
ここまでくると、エステリアはひどい拒絶を示すことはなく、ただ恥らうように胸に手を置き、観念するように瞳を閉じた。じっと耳を澄ませば、微かな衣擦れの音が聞こえる。逸る鼓動を抑え、瞼を開けると、そこにはエステリアと同じく一糸纏わぬ姿のシェイドがいる。シェイドは胸を覆ったエステリアの手を、優しく払い除けると、そのまま柔らかい二つの丘陵に唇を落としていく。丹念に揉み解し、舌先で味わい、軽く吸う。まるで母親の愛情に飢えた赤子のようだとエステリアは思った。頬を赤く染め、見守るエステリアに、
「明りを消すか?」
と、シェイドが尋ねる。あの妖魔とこういうことに至った際には、このように恥じらいを見せるような余裕すらなかった。ただ一方的に、押さえつけられ、妖魔特有の色香にほだされて本能の赴くままに交わったというのが、本当のところだ。ただ快楽に溺れた自分の声だけが、おぼろげであったが耳に残っている。
「そのままがいいわ、最後に――貴方の顔、覚えておきたいから」
「最後なんて、簡単に言うなよ……」
呟くシェイドに、何も答えることなく、エステリアはただ虚空を見つめた。
「んっ……」
早くも露をつけた蕾の先を使って、シェイドはエステリアの花びらをゆっくりと擦りあげた。敏感になった場所に与えられた感覚にエステリアの瞳が潤む。焦らすように、あるいは何かを確かめ合うように何度か擦り上げると、互いの身体が求め合う場所を一つに繋げた。
「ああ……」
熱く固い、そして甘い感触が中心に全身へと広がっていく。貫かれた衝撃にエステリアは思わず身体を仰け反らせた。それも束の間、シェイドはエステリアの広げた両膝を掴むと、ゆっくりと自身をエステリアの内側に刻み付けるように、動き始めた。




艶のある声と、交わる水音、微かに軋む寝台の音が、耳に響く。天蓋の内側では、熱い吐息としっとりとした空気が立ち込めていた。
エステリアを穿つ度にねっとりとした感触が、自身の分身を包みこみ、受け入れた蕾を押し戻そうとする内側の弾力に、シェイドは酔いしれた。熱を孕んだ蕾がエステリアの中で極限にまで膨らみ、固さを増していく。
「あっ、あっ、あぁ……んっ」
それに伴って、エステリアもまたシーツを掴んだまま、軽く汗ばんだ上半身をくねらせ、腰を突き出す。その姿は艶かしく、シェイドの本能を刺激し、駆り立てるには充分だった。エステリアが陵辱されたことを忘れさせるように、その穢れを洗い落とすかのように潤った花びらを、固い蕾が何度も穿ち、柔らかい二つの果実がそれに伴って打ち付けられる。
「あっ……あぁ……」
幾度となく刻み込まれていく愛しさを、エステリアは忘れまいと、思った。気が遠くなるほどの悦びが、身体中を駆け抜けていく。心地よい揺らぎに身を任せた時間は、すぐに過ぎ去り、エステリアは自身に深く沈められた蕾が、小さく爆発するのを感じ取った。乱れた呼吸を整えるように俯せになったエステリアの身体に背後から甘い衝撃が走る。
「シェイドっ……」
驚くエステリアの耳朶を覆いかぶさったシェイドが甘噛みする。
「エステリア……」
掠れたような声で耳元に囁き、背後から腕を回し、エステリアの胸を愛撫する。
奇しくも妖魔によって開発されたエステリアの身体は、狂おしいまでにシェイドを求めていた。軽く浮かせた腰を前後に揺らし、その波に乗る。花を散らす中、同時に芽を摘まれ、エステリアは悲鳴にも似た嬌声を上げた。満たされた白蜜が、身体から溢れ出る。獣じみた交接の中に、エステリアは刹那的な永遠を垣間見た。理性という枷を外したシェイドは、これまで抑えてきた欲求を、一心にぶつけてくる。その導きによってエステリアは座るシェイドの上に腰を落とした。さらに深く繋がった二人は、高みへと向かう。
こうして正面から見詰め合うと、なぜか切ない気持ちになる。
エステリアは、自らの花弁を蕾に擦り付けた。
「熱い……身体が溶けてしまいそう……いっそ、このまま……二人、一緒に消えてしまえたらいいのに」
無意識のうちに、エステリアから涙がこぼれた。
なんと無責任で、恐ろしいことを口走るのだろう――エステリアは自らの言動に、軽い罪悪感を覚えた。
「生きて帰って来い……」
シェイドが囁く。
「至宝を手にしたら、必ず生きて帰ってきてくれ」
切なる願いと共に、突き上がる衝動に、エステリアは苦悶した。
「あぁっ……あっ、シェイド……シェイド……」
聖娼とやらのように、何か一つでも彼に分け与えることが出来たなら、どれだけいいだろう?
灼熱の溶岩のように噴き上がる迸りの全てを受け入れながら、エステリアはシェイドの首に両腕をしっかりと巻きつけると、白い喉を反らせ、至福の中で果てた。
さようなら――と、心の中で呟いて……。
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