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EternalCurse

Story-37.夜宴(サバト)-闇からの祝福と洗礼- *閲覧注意 この回には未成年者の閲覧にふさわしくない表現がされています。
「どうして、ここに……っ!」
妖魔を前にしたエステリアは呪詛の痛みに、思わず身体を折った。
「お前を手に入れるため」
妖魔はゆっくりとエステリアに歩み寄る。
このままではいけない。この身にかけられた呪詛を解くために、早く妖魔を倒さなくては――苦悶するエステリアが顔を上げた瞬間、目に映った景色が一転した。

エステリアの身体が妖魔によって、一瞬にして床に倒され、押さえつけられる。
「もう、誰にも邪魔はさせない」
妖魔がそう言うと同時に、礼拝堂の床が強い光を放った。
そこに次々と古代文字、そして紋様が浮かび上がり、ひとりでに陣形を描く。
それが魔法陣としての形を成すにしたがって、見えない枷がエステリアの身体から自由を奪う。

「なに……これ……」
辛うじて唇を動かすことができたエステリアが妖魔に問いかけた。
「――契約」
妖魔は静かにそう答えると、エステリアの法衣に触れた。
法衣の胸元につけられた留め金を鉤爪でなぞると、それはいとも簡単に外れた。
妖魔の爪がそのままエステリアの胸を辿り、衣装を切り裂く。肌蹴た部分から覗く白い胸に、エステリアは咄嗟に両手を使って隠そうとしたが、魔術によって縛り付けられた四肢が思い通りに動くことはなく、エステリアは羞恥と失意のまま俯いた。
妖魔の蟲惑的な金色の瞳が、露わになった胸を見つめて微かに揺れている。
薄っすらと笑みを浮かべたその顔は、どこか苦しげで、今まで見てきた何者よりも壮絶な美しさを極めていた。
妖魔がエステリアに口付ける。その唇は冷たく、エステリアの神経を、心を麻痺させていく。
妖魔の手はエステリアのなだらかな曲線を辿り、その右腹部に刻まれた呪詛に触れる。呪詛は床にびっしりと浮かんだ古代文字に呼応して、更なる熱を持ち始めていた。
「何を、する気なの?……っ!」
「何度も言わせるな。私はお前の身も心も、全てを手に入れ――また分け与える。お前は私の妻として、私だけを愛せばいい」
妻――?シェイドに続き、この闇の権化たる魔族の皇子までもが、自分を妻として欲しているというのか?この妖魔にとって、この身にどれほどの価値があるというのだろうか?
戸惑うエステリアに、妖魔は冷たく言い放つと、その身体に唇を這わせた。
首筋に、胸に次々と印が落とされていく。(まさぐ)られ、揉みしだかれ、くわえ込まれた乳房の飾りが微かに色付く。胸から背中をなぞり、丹念に愛撫していた妖魔の手が、エステリアのスカートをたくし上げた。
エステリアの身体がビクンと反り返る。妖魔の口付けは媚薬に等しい。それを受けた瞬間から、エステリアは身体の奥底から、沸々とこみ上げて来る、自分でも理解できぬほどの激しい衝動に駆り立てられていた。
ただ目の前にいるこの妖魔の全てを手に入れたい、そんな感情が心のどこかで蠢き、徐々に膨れて、爆発しようとしている。
それでも、この身を穢されるわけにはいかない。純潔を失えば、神子としての資格も失うことになるのだ。
エステリアの中で妖魔の術に抗おうとする理性と、それを打ち消そうとする本能。その二つが鬩ぎ合う。
だが、神子として、自らの欲望を頑なに拒絶しようとする意思に反して、エステリアの露わになった丘陵の先、淡い茂みの奥に潜む源泉は、解きほぐされ、本能の赴くままに妖魔を求めて、しっとりと湧き始めていた。
陥落しつつある『最後の聖域』を目にした妖魔がエステリアの両膝に手を置き、脚を開く。
黒い翼がエステリアを覆う。妖魔は充分に熱を蓄えた異形の楔を、その清らかな身体に打ち込んだ。
「あっ、あぁっ……!」
無残にも『聖域』を貫かれたエステリアの悲鳴が礼拝堂にこだました。




彼に魅入られたあの時に、こうなる運命と決まっていたのだろうか?
それともこれは、神子となることに消極的であった自らに与えられた罰なのだろうか?
妖魔はほんの戯れで、この身体を弄んでいるのだろうか?
それとも彼なりに自分を愛しているのだろうか?

黒い翼の下で絶望を伴った痛みは、鈍い衝撃を経て、甘美なる揺らぎへと変わる――その心地よさと苦痛にエステリアは身を捩じらせ、儚く喘いでいた。
妖魔の熱く、硬く膨れ上がった肉塊が、エステリアの胎内を奥底から突き上げ、うねり、嬲る。
「あっ、あっ……あぁっ……んっ」
唇からこぼれる自分の艶かしい吐息が耳に響く度に、エステリアは自らへの嫌悪感を募らせた。
妖魔とは、人を堕落させるために存在する。このような秘め事は彼らが最も得意とする行為だ。
妖魔は体重をかけ、エステリアの再奥まで入り込むと、その反応を確かめるように、穿ち続けた。
術によって身体を拘束され、抗うことも出来ぬまま、無理やり『一つ』にされた身体に一方的に与えられる快感。そのとろけるような感覚は爪先から背筋を通り抜け、頭の芯にまで伝わった。
恥辱に押し殺していたはずの艶やかな声が、エステリアから再び零れ始める。
「はぁっ、あん……あっ、あんっ」
深い絶望と、この上ない快楽。妖魔の腕の中で、開発されていく新しい感覚に、エステリアは己の内に、聖女である自分とは、その意思とは異なる、見知らぬ『誰か』の姿を見た。
エステリアの心の奥底に潜む、激しい情愛への欲求。
それに突き動かされるように、エステリアは虚ろな瞳を見開き、無意識のうちに、手足の自由を奪っていた術からの拘束を解くと、妖魔の首に両腕を回し、脚を絡め、その雄を貪るように動き始めた。妖魔は一瞬驚いたように、エステリアを凝視した。
が、エステリアが『求めて』いることを知るや、妖魔はエステリアに深い口付けを落とし、口内を嬲ると、それに応じるように、行為を続けた。
「あっ……あんっ、あんっ、あぁっ!!うんっ……んっ」
妖魔の肩に両脚をかけ、押さえつけられた腰に与えられる、さらに激しさを増した律動と――それに伴った悦楽にエステリアは苦悶し、喘ぎ、乱れていく。
巫女として、聖女としてこれまで培ってきた意識と、自分の中に眠る淫猥な女の感情。
相反する魂の間で狂いそうになる。
妖魔は執拗に押し寄せてきたかと思うと、大きく前後し、エステリアが最も敏感に反応を示す場所を探り当て、じっくりと責め立てる。
行為に抗い、堪えようとすればするほど、妖魔は巧緻な技を繰り、その身体を蹂躙してゆく。
正直な反応を示す身体を打ち捨てたとしても、心までは明け渡すまいとした矢先、
「ねぇ……もっと、来て……」
高鳴る鼓動と共に、エステリアの内に眠る何かが、唇を動かした。エステリアは半ば混濁した意識の中に聞いた自分の言葉が信じられずに、瞼をきつく閉じた。
『望みどおり』に狂おしいほどの熱がエステリアの身体を容赦なく貫く。
「あぁっ、はぁん……あっ、あん……」
「それでいい。何も我慢をする必要はない……もっと啼け、エステリア」
よがり声を上げるエステリアにかけた妖魔の言葉は、まるで言霊のようにエステリアの心を蝕む。
徐々に昇り行く魂が、エステリアを更なる深みに陥れようとする。
それでもエステリアは妖魔を突き放すことができなかった。

妖魔が欲しいと心の底から思った。

欲望がついに身も心も凌駕し、支配しようとしたその時、突如として、魔法陣の中の古代文字が、連なり、鎌首をもたげた蛇のように宙に浮かび上がると、エステリアの全身に絡みつき、まるで儀式の終わりを告げるように、その一文字、一文字が身体の中に沈んでいく。
腹に刻まれた呪詛の熱が増した。妖魔の楔がさらに膨らみ、鼓動のように脈打った。
「あっ、いや……やめ……あぁっ!」
突如、我に返ったエステリアが叫ぶも、妖魔がその身体を強く引き寄せる。
「愛しいエステリア……私だけの神子」
耳元で妖魔が囁くと同時に、溶け合う下腹部が収縮し、呼応するように熱いものが迸る。
嬌声と共に妖魔の……闇からの『祝福』を、その身体に脈々と流し込まれ、エステリアは大きく仰け反った。
「はあぁっ……」
脈動と共に、再奥を満たすほどに長々と注ぎ込まれた『祝福』は、灼熱のような力と化して、全身を駆け巡る。
「あっ、あっ、あぁ……」
その高揚感と至福に瞳が潤み、胸の飾りが上を向き、固くなる。全身が紅潮し、高みに達した身体は悦びに打ち震え、幾度となく痙攣を繰り返す。それは未だその身に捉えた妖魔の楔を離さぬための、最も淫靡で愛しい律動。それこそが『堕落』に伴う変化の証。
「っ……あぁ」
妖魔が熱い吐息と同時に、身体を引き離す。甘い衝撃と共に、エステリアの泉より湧き出たものが、妖魔の楔を絡めとり、別れを惜しむように糸を引く。
全ての力が抜け、遠く意識が離れていく気がした。
労わるように、未だ熱を持つその部分を、興奮によって剥き出しになった芯を指で撫で、髪を梳き、頬に瞼に口付けを落としていく妖魔の唇は冷たい。
次に目を覚ましたときには、おそらく自分は神子である資格も、霊力も持ちあわせていないだろう。

神子が愛すべき者とは誰か――、カルディアでのマーレ王妃の問いかけがふいに頭をよぎる。
もはや悪魔の楔を淫らに求め、その種を受け入れたこの身体は、神に愛されることも、愛することすら許されてはいない。
いっそ全てを失ってしまうのならば、その相手は『あの人』であればよかったのに……霞んだ瞼の先に浮かんだ妖魔の姿に、あの黒髪の騎士が重なって見えた。
それが自分の密かな願いが呼び起こした幻であると気付き、エステリアはゆっくりと瞼を閉じた。
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